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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

ランナー第6回から10回まで

ランナー第6回(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

サムナーは「シャトルα」の乗客名簿を急いでチェックし、マコトが乗っていること
を確認した。マコトを守るために何名か乗っているかもしれない。
念のため他の乗客もチェックしてみる。
 それからサムナーはEDOの使用艇を準備するよう、空港本部へ依頼した。
 チェックに時間がかかり、艇を発進させた時、すでに数十時間が経過していた。
 ムーン=ウェイにそって航行し、ルート内をレーザーアイで探査してみるが、
すでに通過したあとである。
その時、急に艇に衝撃がおそった。

 ムーン・ウェイの要所要所には、飛来する小唄石の衝突からムーンウェイを
保護するために、レーザー砲が装備されている。そーのレーザーキャノンがなぜか
自動的に作動したのだ。ルートにそって驀進するサムナーの艇へ、レーザーキャノ
ンが次々に発射される。さらにサムナーの艇は、航続距離は長くは
ない。レーザーキャノンの攻撃によって満身創夷となったサムナーの艇は、ようやく
近くの作業ステーションヘ辿り着く。
 作業ステーションのサブルームに入ったサムナーは、「シャトルα」が一万キロ先
を航行していることを知った。
 サブルームの無線を使い、連絡をとろうとする。
「私はEDOのサムナーだ。「シャトルアルフア」、応答せよ」
 やがて、返事がかえってくる。
「こちら機長のマルチンだ。何の用かな」
「すまん、マルチン機長。ただちに『シャトルα』をもよりの中継ステーションで止めていただきたい」
 「無理だ、サムナー。この停止地点では前後数千キロには中継ステーションがないんだ」
 「何でもいい、早く止めてくれ。これはEDOの命令だぞ」
 「正式な命令を送ってくれ、君の言葉だけを頼りに、私の一存で停止させるわけにはいかん。EDOか
らシャトルル公社へ連絡をとってくれ」
「ええい、くそ、こうしている間にも危険は近づいているのだぞ」
「何、何だって」
「死の天使共が何かを「シャトルα仕掛けたかもしれんのだ」

 「死の天使‘……」
返事は途中でとぎれた。
無線機の故障かと思ったが、そうではない。

点を示す赤い点が、CRT画面から消えていた。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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ランナー第7回
ランナー第7回(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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 マコトは爆発の瞬間、無意識の内に、テレポートしていた。
彼の体はルートの軌道内にあった。軌道内は余り損傷を受けていないようだった。
爆風はシャトルトレインの前後に吹き荒れたようだった。シヤトルトレインは
原型をとどめていない。軌道内には空気がほとんど存在していな
い。マコトは自分の体の表面全体に薄いバリヤーを張ってい
た。そのバリヤーが彼を窒息死から救っていた。
だれか他に生き残っていないのだろうか。超能力であたりを探索する。
生体反応。
サーチする。
機械と人間の合体。何者。
マコトはその生体にテレバシーでさぐりかける。

 戦争のイメージ、.体がパラパラ把吹き飛ぶ、体が引き裂かれる、
光線、死体。

そんな混沌としたイメージが、その生体から送られてきた。

「宇宙コマンド。兵士らしい。冷たい機械、光線銃、飛行物体、ロケット」
サイボーグらしい。
それも有酸素タイプだ。
マコトはサイボーグの存在を念力で探した。
彼はシャトルトレインの残骸に体をはさまれていた。
マコトは念動力を使い、シャトルトレインの残骸から彼を動かし、空気のバリヤーを彼のまわりにめぐらした。その瞬間、マコトは力を使い果たし、気を失
った。
 ヘルムの意識が次第にもどってくる。
朦朧としているヘルムの頭の中に声が響く。この声がどこから
来るのか、わからなかった。
 「ヘルムよ、よく聞いてくれ。おまえの目の前にいる子供マコトは
単なる子供ではない。エスパーだ。彼が月のある場所に行くことにより、
新しい世界が現出する。その世界は今の世界より、より豊かで、
平等で、光あふるる平和な医界なのだ。
お前達のようなサイボーグも差別されることはない。蔭口をさ
さやかれることもないのだ。
 いいか、ヘルム、おまえはその子供を背負い、残されたムーン
=ウェイ二十万キロを月に向かって走り
ぬけるのだ。この困難は神が与えた試練だと思え。
おそらくいまだかって、この地球から月までを走り切った男はいない。
おまえはその最初の男になるのだ。
 いいか、おまえがあのシャトルトレインに
この子マコトと一緒にいたのは決して偶然ではないのだ。我々がすべてプログラミングしたことだ。おまえは選ぱれたランナーなのだ」
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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ランナー第8回

ランナー第8回(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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 「俺が選ばれたランナーだって! 二十万キロを走る。何て莫迦なことを。俺はシャトルトレインの中で夢でも見ているのか?」
ヘルムは叫ぶ。
 「夢ではない。現実だ。ヘルム。お前が土星環戦役で生き残れたのも、私の助けがあったからだ」
 「俺が生き残れだのは、お前のおかげだと」
 ヘルムは顛の中の声に話しかけていた。
 「それなら、なぜサイボーグの体になったのだ。普通の体で、無傷でもよか、たのじゃないか。なぜな
んだ。それに何者だ、お前は」
 「私のことはどうでもいい。それより、ヘルム、お前のことを考えろ。お前は、サイボーグとなり、口
-ドランナーとなった。それで有名人の仲間入りかできたのだぞ。普通人のお前など、だれが見向きす
る。あのままでは下級市民のままだ。今頃は地下労働者として暮らしているに違いない」
 ヘルムは考えていた。確かに今の名声が得られたのは、彼がサイボーグだからだ。人間では不可能だ。
ヘルム=リッカート、下級市民。そうだ、もう未来は見えていたのだ。あの時点で。
「ヘルムさん、大丈夫かい」
 今度は別の声が聞こえてきた。子供の声だ。
「誰だ」
「あなたの目の前にいるよ。マニ導師が話されただろう。僕がマコトだよ」
 「マニヽ導師とは何者だ。ぃえっ、あのまさか、しかし、彼は死んだはずだ」
 「それは違う。彼の体は滅んだ。けれども彼の霊魂は存在している。ヘルムさん、先刻、マニ導師が話
されたように、僕を月まで辿れていってほしいんだ」
「が、助けを呼んだ方が早くはないか」
「誰が助けてくれるの」
「そりゃ、シャトル公社か誰かだ」
「だめだよ」
「なぜだ」
「すでに、僕達は、死の天使のテロリストとして手配されているだろうよ」
「何だって、。死の天使のテロリスト。なぜそんな事になるんだ」
「恐らく私がマニ導師の遺志をついだ人間だということは,EDOに知られているはずだ。しかもシャ
トルが爆破し、ここに、生き残っているのが私とあなたの二人だけだとすれば、なおのことEDOは考
えるに違いないんだ」
「そんな無茶な話があるか」
「そう、導師が仕組まれたはずです。我々はこのムーン=ウェイを走り抜けるより他に方法はないん
だ」
 「走り切るといっても、確か二十万キロといっていたな。俺のエネルギーが最後まで持つかどうか。それ

サムナーは作業・ステーションに準備された作業用ポッドを操縦し、次の作業ステーションヘ辿り着いていた。彼はそこでようやく足の長い作業用小型ロケ。トを見つけた。それて事故現場へ飛ぼうとする。
現在、地球は争乱状態に陥っている。地下に潜んでいた。死の天使‘の活動家運か、一斉に勤きはじめたのだ。あらゆる交通機関は停止状態にあった。
EDOもサムナーの方に助けを出すわけにはいかなかった。             
ムーン=ウェイで現在価いているのは定期点検をする作業用ロボットだけである。


  ヘルム・はマコトを背負って、一つのユニットを走り抜けていた。
 目の前には無限に続ぐ、通路がよごたわっている,が、まわりの光景などまったく目にはいらない。彼の走、る速度では目の前の一点しか見えてはいない。
 たった一人の戦いであった。
競走相手はいない。
しかも、外は宇宙空間なのだ。着地している下は虚空なのである。真空てあり、音も存在しないタ‘地上な.ら、、彼の走ったあとには恐るべき音と衝撃波がおこっているはずなのだが。
 ヘルムは自分の体が絶好調なのを喜んでいた。
この調子でいけば、簡単に二十万キロを走破できるかも
しれない?こればロードゲーム始ま・って以来の快挙となるだろう。
「ヘルムさん、次のユニ。トには空気が充満されている。その宇宙服を脱ぎすててもいいよ」
「ということはすぐ前に妨備壁がおりているということだな」
「あ、停まる必要はない。妨面壁に激突する瞬間に、僕がテレポートする」
 この時、まさに、ヘルムの足は天かける足であった。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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ランナー第9回(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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 EDOテロリストハンター、サムナーは、、地球のEDO本部との連絡をあきらめていた。地球の混乱は極に連しているらしい。デ
ータ通信用光ファイバーもずたずたのようだ。このムーン=ウェイ三十八万キロの中で頼りになるのは自分だけなのだ。
 サムナーはようやく、目標を発見した。
 現在位置と速度を計算し、先回りをして、作業用ロケットを停め、ムーン=ウェイにとりつく。サムナーは外壁をやぶり、作業回路へ入り、二人の到着を待った。

 通路から軌道へ突然、現われた片目のサイボーグは、マコトとヘルム二人に叫ぶ。
 「ここから先は、おまえ達のようなテロリストを通す訳にはいかん」
 「ぽくたちがテロリストだって。間違いも甚だしいよ。それより、あなたは一体だれなんだ。あのシャ
トルに乗っていた人間か。そうではないだろう。爆発の後、あたりには誰もいなかったはずだ。ヘルム
以外には生体反応がなかったはずだからな」
 マコトが答える。
 「笑わせるなよ。テロリストども。おれはEDOきってのテロリストハンター、サムナーだ」
 「君は誤解しているぞ。おれたちがテロリストのはずがないだろう。それよりEDOの人間ならば頼む。我々を助けだしてくれ」
「残念ながら、他人はだませても、おれをごまかすことはできんぞ。え、テロリストども。おまえたちのおかげて、ムーン=ウェイは通行不能になっている。これがテロの仕業でなくてなんだというのだ」
「我々はただあのシャトルトレインに乗りあわせていただけなのだ。犠牲者なんだ」
「そこまで言うのなら、少し驚かしてやろう。いいか、先頃、我々EDOの者が、地球から月に向けての暗号通信を傍受した。その暗号の内容はトーチは放たれた、というものだった。さらに、マニ導師と接触したその子供が月行きのシャトルトレインに乗り込んだ。次にシャトルトレインは爆発した。なぜか、おまえ連二人だけが生き残っている。二人が地下組織、死の天使と考えてもおかしくはないんだ」
「どうすれば、君に我々が一般人だと信じてもらえるのかね。サムナー君」
「その唯一の方法は、俺が乗ってきた作業用ロケットに、二人とも乗り移ってもらうしかない。そして俺の監視のもとで、地球に戻ってもらうことだ」
「もし、それがいやだといえば」
「お宅らは間違ってるぜ。ここまでは、まったく、選択の余地といっものなどありはしない。俺の命令それが絶対なのだ」
 「好きじゃないな、その話し方。そういうのが、一番苦手なんだ。僕、そういったかたい頭の人って好きじゃないよ」
 マコトがぶつくさいう。
 「俺も、人から命令されるのは、ごの子と一緒で嫌いなのだ」
 「おまえ達、何か、勘違いしているんじゃないか。この場面で選択肢が幾つあるとおもっているんだ。いいか、よく聞け。ひとつしかない。俺と一緒に作業用ロケットでこのムーン=ウェイから飛びだすしかないのだ。それがどうしてもいやだというのならば、ここで、死んでもらおう」
 「サムナーくん、残念ながら、君のありがたい提案にそいかねる。私は3日以内に月に行かなければならんのだ。こんどの試合というのは私にとって非常に重大なものなのだ」
「僕も同じだよ。サイコセラフイ研究所ては僕の行くのを首を長くして待っているんだ」
「俺の助けを得ずにどうやって月までいくつもりだね、え、先生がた」
「忘れたのか。俺ヘルムはロードランナー、マッハ4で走れる男だ」
「くう」
 サムナーの喉が変な声をあげた。
(続く)
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■ランナー第10回
 ムーン=ウェイ軌道の下が振動している。
そこに小さな穴が開き、やがて大きくなって機械の手が現われる。
グガーン。
大きな地響き共に、全身が現われる。
戦闘用ロボットだ。それも外宇宙タイプだ。
「聞き分けのない奴らだ。そなれば、こちらも、力に訴えるさ」
 サムナーが叫んでいた。怒りに、顔はふるえている。

「心配する必要はないよ。ヘルム。僕は対ロボット戦の訓練も受けている」
 そう言うが早いか、マコトはテレポートし、ロボットの背後に回っていた。
彼の脳波は瞬時にこのロボットの内部構造をつかんでいた。
そして、その最も弱い部分を吹き飛ばしていた。ロボットは、EDOテロリストハンター
のサムナーの方にズルート倒れかかる。
 「早く、ヘルム、彼のロケ。トを奪い取るんだ」
 エスパーのマコトが叫ぶ。
二人はムーン=ウェイ軌道から、作業回路へ出て脱出ハッチに向かう。

 後から、サムナーが、叫ぶ。
 「そういうまくいくものか!」
 ロードランナー、ヘルムとマコトは、脱出用ハッチを開け、宇宙服を着て、サムナーの乗ってきた
作業用小型ロケットに辿り着こうとした。

 が、瞬間、ムーン=ウェイ軌道側壁がつき破られ、サムナーが再び、現われる。
二人の前でニヤリと笑う。
 「お二人さんに、ただでロケットを利用させると思うか」
 やにわに作業用小型ロケットは発進する。段々二人の前から遠ざかっていく。
「くそう、サムナ─め」
 瞬間、ヘルムとマコトは、再度、軌道内へテレポートしていた。
軌道上の今いた場所は白熱していた。
サムナーのロケットが、自動的に二人の居た位置にレーザービームを発射したのだ。
 「大丈夫か、マコト」

 マコトの顔は青白い。
 「大丈夫ださ、ヘルムさん。いずれにしても、もうロケットは使えないだろう。
我々は、やはりこのルートを走らねばならない」
 再度のテレポートでマコトは疲労困然し、気を失った。
「マコト、しっかりしろ」
 ヘルムは大声をあげた。
 「サムナー、聞こえているだろう、サムナー、お前がいるのはわかっている! いいか同じサイボーグ
同志という事で、俺のいうことを聞いてくれ。 マコトは唯の子供ではない。
いいか、新しい世界を生むための種子なのだ」

 どこからともなくサムナーの声が響く。

「笑わすなよ、ヘルムめ。 筋肉ロボットめ 同じサイボーグだと。
きさまは単なる鉄と機械のかたまりにすぎん、
ただ早いだけの単細胞ロボットだ。
きさまがサイボーグなものか。それにそのガキが新しい世界を生むための種子だと! 
笑わせるな。何をたわごとをいう。そいつは単なる頭でっかちのガキにすぎん。
それに俺はEDOに属するサイボーグだ。現体制を変えるような、そんな手助けが
できるわけない。そうだろう、ヘルム」
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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